大学病院に勤務していた頃、私は血液疾患や抗がん剤治療を専門とし、主に専門領域の診療に携わっていました。内科医として全身を診る姿勢は持っていたつもりでしたが、患者さんが在宅医療へ移行すると大学病院には通われなくなり、その後の経過を見守ることができません。患者さんの人生の一部分だけを担当しているような感覚があり、どこか物足りなさを覚えていました。
現在は在宅医療に従事し、患者さんを生活の場で継続して診療しています。長い経過にわたって関わることができる医療には、大学病院とは異なる重みと責任があります。もともとの専門分野からみれば、在宅医療でははるかに広い疾患への対応が求められます。しかしその一方で、輸血医療など大学病院で培ってきた専門領域が、在宅の現場でも必要とされる場面が確実に増えています。自らの専門性が新たな形で活かされていることに、大きなやりがいと充実感を感じています。
在宅医療も今後、より専門分化していく流れは避けられないでしょう。その中で、専門性を持ちながら全身を診る姿勢をどう両立させるか。それが、これからの在宅医療に求められる視点だと考えています。